3代目です。
あづまやにとっては何年越しかのプロジェクトが今年ついに始動していきます。
写真を見ても。。「?白の反物?」ですよね。。
きっかけは5年ほど前にお客様から言われたこんな言葉です。
木綿って縞(しま)や格子柄ばかりで飽きちゃうのよね
なぜ絹の着物のような小紋柄がほとんど無いのでしょうか?。。
もちろんあづまやもこんな声にお応えしたいと何度も思ってはいたのですが、、、
なぜ出来なかったというと。。。
答えは、ズバリ!ロット数です。
え?ロットって何?
絹の場合、1反から白生地が買えて1反から染めて貰える仕組みが昔からあり、簡単に出来ちゃうのですが、木綿ではなぜ出来なかったかというと。。
まずは理解して頂きたいのでマニアックですがこの先のお話にお付き合いくださいませ。
織物を織るためには手織りであろうが機械の織機であろうが織る前に実は非常に手間がかかることがあります。
で、皆さんからすると手間がかかるのは、ガッシャンガッシャンと実際に織る手間が一番だと思っていらっしゃるかたも多いとおもいます。
実は。。。多くの場合は違うのです。*一部例外もあり
正解は織物で一番手間がかかるのが、「仕掛け」と呼ばれる作業
手織りだろうが機械織りだろうが着物のように複雑な織り方をしている物はこの仕掛けに一番手間がかかります。
これは絹だろうが木綿だろうが一緒です。
ここを詳しく説明している当店のYouTubeアーカイブが以下にあるので是非ともお暇なときに見ておいていただきたいです。
ちなみに上記の動画の博多織ですと経(たて)糸の「仕掛けに1週間ほどもかかる物もある」と言っていますよね。
だから絹であろうが木綿であろうが、この仕掛けに対する手間を「たった数反のために」掛けると、どうなるのでしょう?
頭の良い方ならすぐにわかりますよね?
答えは、仕掛けにたいしての賃金が織る反数で割られるというのが正解です。
白生地1反の価格は仕掛けの手間と糸代と織り工賃が合わさってある程度の価格が決まります。オリジナルのものであれば、そこにテキスタイルデザイン料(設計図代)なども掛かってきます。
絹の場合、手織りの伝統的工芸品で有名な大島紬などでも8反ロットで作られていることが多いと聞きます。
これが機械織りの丹後縮緬などであれば、最低16反からとお聞きしたこともあります。
では木綿ではどうでしょうか?
木綿の価値は絹に比べて5分の1以下だと言われています。(これはこの先に絶対に変えていかないとダメなんですが)
しかし。。。仕掛けに対する手間は。。。けっこう掛かります。
だから、絹よりもっともっとたくさん作らないと仕掛けの手間代を割れないのです!
今日はちょうど三河帯芯の織元さんが当店に来ていたのでちなみに帯芯の場合はどのていど1台の織機に経糸をセットするのか聞いてみました。
答えはな・な・な・なんと!
1万メーターくらい建てるよ。
とあっさりと言われました。
帯芯が1本約4mだとすると1台の織機を準備すると最低でも帯芯を約2,500本も織ることになります。
これは1台での計算なので、帯芯工場がいかにたくさんのロットで生産しているのがわかりますよね?
逆に言えば、帯芯がなぜお値打ちなのかは、織元さんが先を見越してたくさん建てることをしているからなのです。これが売れなくなってくればくるほど織ることが出来なくなり織機が止まるので織元さんの負担が大きくなるということになります。
当店もオリジナルの白生地が作りたいと三河木綿の織元さんに掛け合った当初は、軽く3,000mくらい?と言われてびっくりしたのを覚えております。
着物1反は約13mあるので確かに帯芯よりははるかにロットは少ないのですが、それでも約214反出来てしまいます。
214反を私の1店舗で売ろうと思ったら。。。
しかも、完全オリジナルの場合、糸の密度など計算を間違え生地が薄すぎたり厚すぎたりすれば、売り物にならないリスクもあります。
そこがネックでこの数年間、やりたい気持ちを抑えていつかやりたいと思いながら心に締まってきました。
しかしここ数年、おかげさまで木綿着物がある程度たくさん売れるようになり、織元さんも「あづまやさん用に機を建ててあげる」と言ってくれるようになり、チェッカーボードなどは試しに500m建ててもらったら数ヶ月で売り切れました。
かな〜り話が長くなりましたが、、、
昨年の夏頃からいきなり話が進み、この成功経験をバネに白生地もやってみようと織元さんとの話が弾み、画像のような白生地が出来上がりました!
もちろん織り方にも綿の糸にもこだわった完全オリジナル。
いずれたくさん売れるようになったら、いろんな生地が織れる事を期待して、夢を見ています。
当店のネビュラスシリーズを皮切りに発売しています。是非ともご来店の際には生地を触ってみてください。
厚地なのに柔らかく、シワになりにくい後染め木綿着物の登場です!
三河木綿オリジナル着物 ネビュラス