3代目です。
今日はとても真面目なお話。代々続く着物屋としてとても大切なお仕事をお受けしました。
お受けできる喜びとともにある意味、特殊なスキルが必要なお仕事でもあります。

アメリカはシアトルからのご注文。

元々は当店のてれびじょんをご視聴くださってアメリカはシアトルよりお着物のご相談からお客様になっていただき、お話を進めていく中で、「あづまやさんで印半纏を作れますか?」との会話が。

ご返信は、もちろん作れますよ。半纏や幟などは元々呉服屋の大事な仕事の一つで、地域のお祭り神事などに使用する布製品のありとあらゆるご要望にお応えしてきました。とお伝えしました。

実はそのお客様はあの2011年の東日本大震災で被災されたのをきっかけに海外に移住されたとのこと。
そして、日本在住の時は代々続く酒蔵を営まれていらっしゃったとのことでした。
しかし、、、福島第一原発の事故で被災され蔵は帰還困難区域に指定されてしまいました。

詳しくは以下のサイトが私の乱筆な文章よりお客様のことを正確に伝えてくださっていると感じましたので以下にリンクを記します。是非ともご一読くださいませ。

【私の転機】株式会社冨沢酒造店
https://www.youmaga.com/seattleite/tenki/0714-tomisawa/
福島県双葉町の冨沢酒造店、「伝統の地酒 『白冨士』 をシアトルで造る
https://www.junglecity.com/jcommunity/jc-news/tomizawa-shuzo-moving-production-of-shirafuji-to-seattle/

上記の結果、アメリカに家族全員で渡られ、シアトルの地で一から酒造りを始められる決意をされました。
ただし、新型コロナの影響で遅れに遅れ、ついに今年の年末にスタートラインに立たれるとのことで是非とも曽祖父の代に作った本物の印半纏を着て酒造りを初めたいとおっしゃってくださいました。その他にも手拭い(注染の本染めで)・帆前掛けもお作りすることになりました。

まずは、リモート接客とメールにてご相談を受け、手拭いからお作りすることに。
海外からの手拭いはもちろん別誂え染めの注文は初めてなので入念に打ち合わせをさせていただき、オリジナルデザインの型を彫り浜松注染で染め上げました。

次は曽祖父様の半纏をお作りすることになったのですが、こちらはリモートで見る限り、まず本格的な藍染の半纏だと感じましたので実際の見本品をお送りいただくことになりました。

送られてきた半纏を見た瞬間。「あぁ〜本藍染の本格的なやつだぁ」と思わず声が出ました。

あづまやは今までに何百着もの半纏をお作りしてきましたが、本藍染の半纏は恥ずかしながら私の代ではお作りした経験はなかったので、初めはさぁ困ったになったのですが、日本の各着物産地を巡っていた時に、越後で藍染にて半纏を作っている工房さんがあったことを覚えていました。
すぐさま、手拭いでお世話になった浜松の問屋さん(遠州地方はとてもお祭り神事に力を入れている地方なので半纏染めなどに精通しています)に相談し、どうにかこの本格的な曽祖父様の印半纏に限りなく近づける、またはそれを超える現代の本藍染の半纏が作れるようにお願いしました。

その結果、、

想像以上の出来上がりになりました!ロゴデザインは完全に同じで袖口布、肩当て布に至るまで同じ仕立てに。
生地もいわゆる既製品の法被のようなペラペラではなく、ガチッとしっかり織られた木綿の生地になりました。
そして昔の半纏の大きさがあまりに小さかったため、今回は実際に着用されるご家族一人一人のサイズに合わせてお仕立てさせていただきました。

極め付けはなぎなた袖の女性用印半纏。着物を着たまま半纏を着用することができるように特別仕様にてお作りしました。

そして前掛けも世代を超えて一部変更して蘇りました。

このブログを書いているまさに今、シアトルにこの印半纏と前掛けが海を越えもうすぐ届くところです。

実は、リモートにてすでに出来上がりをお見せしているのですが、実際にお手元に届きご満足いただけることを祈っております。

この仕事を通じ、代々続く大切なお仕事の節目に纏っていただける半纏をお作りさせていただいた喜びを忘れることなく、そして私も次の代が継いでくれるのであればこの仕事も着物屋の大切な仕事として繋いでいきたいと思っています。

どうか遠く海外の地で酒造りが成功されることを祈っております。

(冨沢酒造様に掲載の許可をいただいております。)